4.3 共振回路としての原子モデル
筆者の論文“点電荷の複素ポテンシャル表現とその意味について”で、電荷に関して新しい仮説を提案した[8]。すなわち、電荷そのものが周期的に変化しているのではないかというものである。電荷がなぜ存在するかという理由は物理学でも未だ最大の謎となっている。ディラックの予測によれば、電荷の離散性を説明するのに磁気単極の存在が不可欠であるという[5]。未だ磁気単極が観測された例は聞かないが、観測されないことと存在しないことは同値ではないことを付け加えておく。
古典論によれば、プラスの電荷は陽子として、マイナスの電荷は電子として存在し原子を構成している。量子力学では電子を雲としてとらえ、確率論的にしか電子の存在位置を表せない。電子は粒子としての性質と波動としての性質を持っていることが量子力学からわかっている。
電子を表すモデルはいろいろあるが、電子を剛体球の表面電荷としてとらえる剛体球モデルというのがある[9]。また、電子は永久電流そのものであるととらえている人もいる[10]。
筆者が提案する仮説は、原子もここで示したような同心球面対の共振回路を形成しているのではないか、ということである。同心球面対のモデルでは、電子は球殻を形成する場合と、電流として存在する場合との二面性を持っている。どちらの面が強調されるかは位相に依存しており、同時に両面が強調されることはない。このことは電子の位置と運動量を同時に観測することはできないとしている不確定性原理の意味をうまく説明している。
また図6において位相0°と位相180°では、互いにプラスとマイナスの立場が入れ替わる。これは互いに反物質の状態を示している。宇宙論では、宇宙の果てに反物質でできた反宇宙があるという説がある。なぜこの宇宙に物質だけが存在し、反物質が(通常状態では)存在しないか、その理由は説明されていない。本論文のモデルによれば、物質と反物質は位相の違いだけである。測定器を含めた観測者は、位相0°の状態にストロボをあてて観測しているようなものである。つまり反物質が存在しないのではなく単に認識できていないだけであり、物質界と反物質界は重なって存在しているととらえることもできる。詳細な検討は今後の課題とする。