2.2 球対称の電気振動場

 図1で左右二つの導体球のうち、片方をもう片方の内側に挿入することを考える。つまり、+Qの電荷を持っている導体球の物理的形状を小さくし、逆に-Qの電荷を持っている球を大きくして裏返すように球殻を作る。そして図3のように、その球殻の中央に+Qの電荷を持つ球を挿入する。このとき両者の球(殻)対の中心が互いに重なるように配置する。


図3

図3 球対称の電束
Fig.3 Electric flux of spherical symmetry.

 この場合、電束は図3のように、中央の球面から外側の球面に向かう球対称の放射状になることが分かる。導体の場合は内部に電界が生じないので表面だけを考えればよく、同心球面対のコンデンサと同等になる。


図4

図4 球対称の電束電流場
Fig.4 A displacement current field of spherical symmetry.

 次に、大小二つの球面対を導線で結び途中に電流源を挿入し、半強制的に電気振動させてみよう。図4で示すように電束電流の場合も電束の場合と同様に中心と球殻との間で球対称の放射状または吸収状になる。一般に電流の周りには磁界が生じるが、球対称の電流場においては磁界が生じない。これは球が特別な方向を持たず、隣り合う磁界が互いにうち消しあうために起こる現象で、球の対称性の高さからくる性質である[2]。実際このモデルと同等なものが、インテリアとしても作られている。図5はガラス球に希ガスをつめて球状の放電を定常的に起こすように工夫したインテリアを撮影したものである。


放電球

図5 球状の放電場
Fig.5 Discharging current of spherical symmetry.