4.点電荷の複素ポテンシャル表現

 4.1 点電荷の複素化

 3章において,存在するものは陽性と陰性,粒子性と波動性という互いに相対する二つの局面をもつ二種類の性質が共存,あるいはペアで存在しているということを確認した.

 エネルギーの根本ともいえる電気の,またその基本概念である点電荷について,一つの仮説を設けることにする.その仮説とは,点電荷の電荷それ自体がある周期で変化しているのではないかということである.この仮説が妥当であるか,実際に起こり得ることであるか,という検討は今すぐには取り上げない.とりあえずこのような基本法則から成り立つ電荷があるとすれば,それはどのような状態をしているか,その電荷の作るポテンシャルや電界はどのようになっているだろうか,を興味の対象とする.つまりここで仮定する電荷を基本とする宇宙があるとすれば,それはどのような宇宙であろうか,という順序で思考するのである[3].

 点電荷のポテンシャルは,電荷をq,中心からの距離をrとすれば,式(4)より,q/4πεrで表される.式の本質をみるために係数を取り除くとq/rである(以下同様に係数を省略して考える).ここでの仮定は,電荷それ自体がq=eで表され,しかもθが時間と共に変化したらどうなるのか,ということである.そのときのポテンシャルは式(8)で与えられる.

V = e /r
(8)

 位相θと,電荷e,ポテンシャルe/ r は,位相θの取りうる値によってそれぞれ変わる.その様子を表1に表す.

表1 位相θのときの電荷とポテンシャル
Table 1 Potential and charge at Phase θ
位相     θ  0
 (0度) 
 π/2
 (90度)
  π
 (180度)
 3π/2
 (270度)
電荷    e  1   i   -1   -i 
ポテンシャル
     e/r
  1/r    i/r   (-1)/r (-i)/r